「治す」から「病気にならない」時代へ。
これからの医療は、「病気を治す」ことだけではなく、「病気にならない、なりにくい身体をつくる」ことが、ますます重要になっていくと考えています。
もちろん、すべての病気を防ぐことはできません。
しかし、病気になりにくい身体をつくることはできます。
その鍵となるのが、身体が本来持つ回復力を高めることです。
私は、疲労は非常に多くの病気の「土台」になり得ると考えています。
ただし、すべての病気の根源が疲労というわけではありません。
病気には、遺伝的要因、感染症(細菌・ウイルスなど)、加齢、環境(喫煙や大気汚染など)、生活習慣、そして疲労やストレスなど、さまざまな要因が複雑に関係しています。
現代医学でも、慢性的な疲労が続くと、免疫機能の低下、自律神経の乱れ、炎症の増加、ホルモンバランスの変化、睡眠の質の低下などが起こり、感染症、高血圧、糖尿病、心血管疾患などのリスクが高まることが分かっています。
中医学には、
「正気存内、邪不可干」
(せいきそんない、じゃふかかん)
という言葉があります。
「正気が身体の中に充実していれば、邪気は容易に侵入できない」という意味です。
ここでいう正気とは、生命を維持し、病気から身体を守り、回復させる力のことです。
一方、邪気とは、身体の正常な働きを乱し、病気を引き起こすすべての要因を指します。
つまり、疲労によって正気が弱れば、病気になりやすくなります。
言い換えれば、疲労とは、身体が本来持つ回復力や防御力を低下させ、多くの病気が起こりやすく、また治りにくくなる共通の土台と考えることができます。
私たち鍼灸師は、問診・脈診・舌診などを通して、身体全体のバランスを診ます。
病名だけを見るのではなく、正気と邪気のバランスを見極め、その人が本来持っている回復力を引き出すことを目指して治療を行います
だからこそ、
これからの「病気を治す医療」と「病気にならない身体づくり」を支える予防医療の時代において、鍼灸は大きな役割を果たせると考えています。
